心房細動の怖さ
心房細動になると何が怖い?
心房細動自体は、すぐに命にかかわる不整脈ではありません。しかし、治療をしないで放っておくと、だんだんと発作が頻繁に起こるようになったり、発作の時間が長くなったりしていきます。そうすると、次のような症状が起こることがあるため注意が必要です。
怖いこと① 心原性脳梗塞
心房細動は、心房が小刻みに震えて痙攣している状態なので、血液が滞留しがちになり、心房内で「血栓」(血のかたまり)が形成されることがあります。


血栓が血管を通って脳まで運ばれて脳の血管につまると、「心原性脳梗塞」と呼ばれる脳梗塞を起こしてしまいます。
心房細動を起こしている患者さんでは、心房細動を起こしていない患者さんの5倍程度、脳梗塞を発症するリスクが高いといわれています。



脳梗塞は、つまる血管の太さやつまり方によって3つのタイプがあります。心原性脳梗塞は脳梗塞の約3割を占めており、心臓でつくられた大きめの血栓がつまることにより引き起こされるため、他の脳梗塞よりも脳がダメージを受ける範囲が広くなります。
脳
梗
塞
の
種
類
特
徴
主
な
原
因
梗塞巣は小さい


高血圧などで、長い間、脳の細い動脈に負担がかかり続けると、血管の壁が厚くなってつまってしまい、脳の深い部分に血が流れなくなってしまいます。ゆっくりと進行し、症状が出ない場合もあります。
日本人の脳梗塞患者さんで一番多いタイプです。
脳
梗
塞
の
種
類
特
徴
主
な
原
因
ラクナ脳梗塞よりも
大きな梗塞巣


血管の壁にコレステロールがこびりついて血管を狭くしてしまうと(動脈硬化)、そこに血栓ができてつまることで起こります。
脳の比較的太い動脈でも動脈硬化が起こりやすいため、ラクナ脳梗塞よりも広い範囲に血が流れなくなります。
動脈硬化
脳
梗
塞
の
種
類
特
徴
主
な
原
因
大きな梗塞巣


心臓などでできた血栓が血流に乗って脳に運ばれて血管をつまらせてしまうことで起こります。
3つのタイプの中では脳の最も広い範囲に影響が出やすいため、重い後遺症が残ってしまう可能性が高いといわれています。
心房細動など心臓の病気
心原性脳梗塞が起きて入院した患者さんのうち、約半数は寝たきり、もしくは、歩くのに介助が必要な状態になったというデータもあります。心原性脳梗塞を予防するためにも、早めに心房細動の治療を受けることが大切です。


もしくは歩くのに介助が必要な状態になる
怖いこと② 心不全
心臓は、心房と心室が規則正しく収縮し血液を身体のすみずみに送り出すポンプの役割をしていますが、心房細動をきっかけに、全身に十分な血液を送り出すことができなくなる「心不全」という状態になってしまう場合があります。


心不全になってしまう場合がある
心不全になると、息切れ、むくみ、だるさなどの症状によって日常生活に支障が出ることがあります。 軽度なうちは自覚症状がほとんど見られない場合もありますが、症状が落ち着いている状態と急激な悪化を繰り返すこともあります。


心不全は「心房細動」「心筋症」「虚血性心疾患」「心臓弁膜症」など、様々な心疾患が原因でなってしまうといわれていますが、心不全の方が心房細動にかかると、心機能はさらに低下し悪化してしまいます。例えば、心筋症のひとつである「肥大型心筋症」という病気は、不整脈(心房細動)がないときには症状がありませんが、いったん心房細動による発作を引き起こすと、「急性心不全」を発症し最悪の場合命の危険にさらされてしまうこともあるのです。
現在、心疾患は日本人の死亡原因の第2位であり、心不全と診断されてから5年以内に50%の患者さんが亡くなってしまうという報告もあります。
(2013年)


心不全が悪化するとだんだんと心房細動の発作が頻繁に起こり、発作時間も長く続くことでさらに心不全になりやすくなる、という悪循環に陥ってしまうことがあります。
心房細動と心不全を繰り返す悪循環に陥ってしまう前に、早めに心房細動の治療を受けることが大切です。

